個人事業から法人成りして頑張っている社長さん。
小規模法人の会計経理を具体例で掲載します。
社長名義のクレジットカードでいろいろ買っている場合の具体例公開を公開します。
ドメイン代の仕分け
ドメイン代を社長名義のクレジットカードで支払った際の会計処理についてです。
ドメイン代は、一般的に通信費または支払手数料として処理されます。
この費用を社長が立て替えた際の仕訳は、前回のマニュアルで解説した立替金処理と同じ流れになります。

今回は、ドメイン代の支払い(費用発生)と、その際の「役員借入金」の計上に焦点を当てて解説します。
1. ドメイン代支払時の仕訳(費用発生と負債計上)
ドメイン代(例:年額 3,000円)を社長名義のクレジットカードで支払った場合、会社には「通信費」(または支払手数料)という費用が発生し、同時に社長への返済義務が発生します。
日付 | 勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
(支払日) | 通信費 | 3,000 | 役員借入金 | 3,000 | 社長立替:ウェブサイトドメイン更新料 |
処理のポイント
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勘定科目:
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借方(左側): 通信費(または支払手数料)。ドメインはインターネット上で会社を運営するために必須の費用であるため、この科目を使います。会社で一貫してどちらかの科目を使うようにルールを決めておきましょう。
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貸方(右側): 役員借入金。社長が立て替えたことで、会社に社長への返済義務(負債)が発生したため、この流動負債の勘定科目を計上します。
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証憑(しょうひょう):
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この仕訳の根拠となる証憑は、ドメイン会社から発行された領収書や利用明細、および社長のクレジットカードの利用明細(会社利用分であることを証明するため)となります。
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後日の精算について
この3,000円の立替金を後日、現金や会社の銀行口座から社長へ返済する際は、前回のマニュアルのステップ3と同じ仕訳で処理されます。
日付 | 勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
(精算日) | 役員借入金 | 3,000 | 現金 または 普通預金 | 3,000 | ドメイン代含む立替金精算 |
この処理で、負債である「役員借入金」が減少し、会社の資産(現金または預金)も減少します。
これで、ドメイン代の経理処理は完了です。
サーバー代の仕分け
サーバー代の処理についても、ドメイン代と基本的に同じ**「費用が発生」+「役員借入金の計上」**という考え方で問題ありません。
サーバー代は、ウェブサイトをホスティングするために不可欠な費用であり、ドメイン代と並んでウェブ関連の費用として処理されます。
具体的な勘定科目と仕訳を解説します。
サーバー代の処理(社長クレジットカード払いの場合)
サーバー代(例:月額 5,000円)を社長名義のクレジットカードで支払った場合も、会社に費用が発生し、同時に社長への返済義務が発生します。
1. 使用する勘定科目
サーバー代として最も一般的に使われる勘定科目は以下の通りです。
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通信費: インターネット関連の費用全般に使用する場合。ドメイン代と同じ科目に統一することで、管理が楽になります。
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支払手数料: サービス利用に伴う対価として使用する場合。
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賃借料 (ちんしゃくりょう): サーバーのスペースを借りている、という考え方で処理する場合。
推奨される処理方法:
ドメイン代と合わせて「通信費」に統一するのが、最もシンプルで一般的な方法です。これにより、インターネット関連費用を一括で把握できます。
2. 仕訳の具体例(費用発生と負債計上)
サーバー代 5,000円を社長のクレジットカードで支払った場合。
日付 | 勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
(支払日) | 通信費 | 5,000 | 役員借入金 | 5,000 | 社長立替:〇〇サーバー利用料(○月分) |
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借方(左側): 通信費(費用発生→P/Lに反映)
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貸方(右側): 役員借入金(負債増加→B/Sに反映)
この仕訳をすることで、会社の費用が正しく計上され、同時に社長への返済が必要な金額が「役員借入金」の残高に加算されます。
3. 後日の精算について
サーバー代を含む立替金を社長に精算する際の仕訳は、ドメイン代やその他の立替金と合算して処理します。
日付 | 勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
(精算日) | 役員借入金 | 5,000 | 現金 または 普通預金 | 5,000 | サーバー代含む立替金精算 |
💡ポイント:年払いの場合の注意点
サーバー代を1年分などまとめて前払いした場合(例:年額 60,000円)は、「前払費用」という勘定科目を使って、期間に応じて費用を分割して計上する期間按分(きかんあんぶん)の処理が必要になります。
ただし、小規模な会社で重要性が乏しい(金額が少額である)場合は、支払った時点で全額を費用処理(通信費)してしまう簡便法が認められるケースもあります。
社長名義のカードでカメラの撮影機材購入
撮影用のライトを社長名義のクレジットカードでご購入された場合です。
この場合の借方勘定科目は、そのライトの金額と使用目的によって変わります。
原則として、取得価額が10万円未満であれば「消耗品費」で処理できますが、高額な場合は「工具器具備品」(固定資産)として計上する必要があります。
以下のフローチャートに沿って最適な勘定科目を判断してください。
カメラ撮影用ライト購入時の勘定科目判定フロー
1. 取得価額(税込/税抜)の確認
まず、購入したライトの1個あたりの取得価額を確認します。
金額 | 処理方法 | 勘定科目(借方) | 備考 |
10万円未満 | 一括で費用処理 | 消耗品費 | 小規模な備品、固定資産税の対象外 |
10万円以上 | 固定資産として計上 | 工具器具備品 | 減価償却が必要(複数年にわたり費用化) |
✅ 取得価額が10万円未満の場合
勘定科目:消耗品費(または雑費)
事務用品や備品と同じく、購入した時点で全額を費用として計上できます。
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推奨: 消耗品費(備品的な性質のため)
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例外: 金額がごく少額(数千円程度)で他の雑多な費用とまとめて管理したい場合は雑費も考えられますが、経費を明確にするため消耗品費が最も適切です。
2. 仕訳の具体例(10万円未満の場合)
撮影用ライト 35,000円(税込)を社長のクレジットカードで支払った場合の仕訳です。
日付 | 勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
(支払日) | 消耗品費 | 35,000 | 役員借入金 | 35,000 | 社長立替:撮影用LEDライト購入 |
3. 取得価額が10万円以上の場合(固定資産)
ライトの取得価額が10万円以上の場合は、会計上は固定資産として扱われ、以下の特例を考慮する必要があります。
💡固定資産となる場合の特例(中小企業の場合)
中小企業や個人事業主には、税制上の優遇措置として以下の特例があります。
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一括償却資産の特例:
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20万円未満の資産は、購入額を3年間で均等に費用として処理(償却)できます。
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少額減価償却資産の特例:
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青色申告をしている中小企業の場合、30万円未満の資産であれば、購入した年に全額を費用(損金)として計上できます。
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✅ 30万円未満の場合の推奨処理
この少額減価償却資産の特例(30万円未満)を使うのが、税務上も処理上も最も有利になることが多いため推奨されます。
勘定科目:工具器具備品
特例を適用して購入時に全額を費用化する場合でも、一時的に「工具器具備品」として固定資産に計上し、決算時に特例を適用する処理が一般的です。
日付 | 勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
(支払日) | 工具器具備品 | 250,000 | 役員借入金 | 250,000 | 社長立替:高性能撮影用照明一式 |
【注意】 250,000円を全額費用としてP/Lに反映させるための具体的な「償却」処理は、決算時に別途行います。
日々の仕訳では、上記の固定資産計上までで問題ありません。
スマホ購入の仕分け
撮影専用に3万円のスマートフォンをご購入された場合です。
この場合も、前述の撮影用ライトと同じく、金額が10万円未満であるため、原則として固定資産にせずに一括で費用処理することが可能です。
使用目的が「撮影」という業務用途であり、一般的な事務用品ではないため、以下の勘定科目が適切です。
撮影用スマホ(3万円)購入時の勘定科目
推奨科目:消耗品費(または工具器具備品)
10万円未満の資産を一括で費用処理する場合、以下の2つが有力な候補となります。
勘定科目 | 適用理由 | 補足 |
消耗品費 | 一括費用処理の最も一般的な科目です。スマホ自体は備品的な性質を持つため、10万円未満であればこの科目で処理するのが最も簡単で明快です。 | 一般的な備品や事務用品と同じ科目で処理できるため、管理がシンプルになります。 |
工具器具備品 | 固定資産的な性質を重視し、「少額減価償却資産」の特例を適用する前提で計上する場合に使われます。 | 資産台帳に載せて管理したい場合や、将来的に高額な撮影機材が増える予定がある場合に、この科目で統一することもあります。 |
結論として、3万円という金額であれば、最もシンプルな「消耗品費」で処理することをおすすめします。
仕訳の具体例(消耗品費として処理)
30,000円の撮影用スマートフォンを社長のクレジットカードで支払った場合の仕訳です。
日付 | 勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
(支払日) | 消耗品費 | 30,000 | 役員借入金 | 30,000 | 社長立替:撮影用スマートフォン購入 |
💡もし「通信費」ではないのか?
このケースで「通信費」を使わないのは、スマホ本体の購入費用は「通信サービス(月額料金)」とは異なり、「撮影というツール(道具)」を購入した費用と考えるためです。
月々の通信料金(SIMカード代など)を支払う場合は「通信費」を使いますが、本体代金は道具代として「消耗品費」で処理するのが一般的です。
中古のパソコンを業務用で激安で買った場合
中古のパソコンを業務用に8,950円という非常に安価な価格で購入した場合です。
この場合、金額が10万円未満であるだけでなく、1万円未満と少額であるため、処理方法は非常にシンプルになります。
中古パソコン(8,950円)購入時の勘定科目
推奨科目:消耗品費
パソコンは本来「工具器具備品」という固定資産に分類されますが、取得価額が10万円未満、特に1万円未満の少額な備品については、その性質にかかわらず「消耗品費」として一括で費用処理するのが最も一般的かつ合理的です。
勘定科目 | 適用理由 | 補足 |
消耗品費 | 一括費用処理の最も一般的な科目です。少額な備品や工具、事務用品など、使用期間にかかわらず購入時に全額費用化します。 | 処理が簡単で、税務上も問題なく全額経費にできます。 |
雑費 | 金額が非常に小さく、他の費目にあてはまらない場合に使用します。 | 金額が小さいため雑費でも問題はありませんが、パソコンという備品的な性質を考慮すると消耗品費の方がより適切です。 |
結論として、8,950円のパソコンは「消耗品費」として処理するのがベストです。
仕訳の具体例(消耗品費として処理)
中古パソコン 8,950円を社長のクレジットカードで支払った場合の仕訳です。
日付 | 勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
(支払日) | 消耗品費 | 8,950 | 役員借入金 | 8,950 | 社長立替:業務用中古PC購入 |
この仕訳により、
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費用(消耗品費)が計上され、すぐに経費になります。
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社長への返済義務(役員借入金)が計上されます。
これで固定資産としての管理は一切不要となり、経理処理が完了します。
会社の自動車保険料購入時の勘定科目
会社の車の保険料を社長名義のクレジットカードで支払した場合です。
自動車保険料は、「車両費」または「保険料」という勘定科目を使って処理するのが一般的です。
この場合も、費用処理と、社長への立替金の計上という基本的な流れは変わりません。
会社の自動車保険料購入時の勘定科目
推奨科目:保険料(または車両費)
保険料は、その性質上、「保険料」という専用の勘定科目で処理するのが最も正確で一般的です。
ただし、車両にまつわる費用(車検代、ガソリン代、修理代、税金など)をすべて「車両費」という一つの科目にまとめて管理したい場合は、そちらを使っても問題ありません。
勘定科目 | 適用理由 | 補足 |
保険料 | (最も一般的) 会社が加入する火災保険、賠償責任保険など、すべての保険をまとめて管理する場合に適しています。 | 費用の性質が分かりやすいため、通常はこの科目を推奨します。 |
車両費 | 車に関する費用(ガソリン、修理、税金、保険)をすべて集約して管理する場合。 | 車両に関するコストを一つの科目で把握したい場合に便利です。 |
【重要】 どちらの科目を使うにしても、一度決めたら毎年継続して同じ科目を使い続けることが、比較分析のうえで重要になります。
仕訳の具体例
自動車保険料 55,000円を社長のクレジットカードで支払った場合の仕訳例です。
1. 「保険料」として処理する場合
日付 | 勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
(支払日) | 保険料 | 55,000 | 役員借入金 | 55,000 | 社長立替:〇〇車両保険料(○年分) |
2. 「車両費」として処理する場合
日付 | 勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
(支払日) | 車両費 | 55,000 | 役員借入金 | 55,000 | 社長立替:〇〇車両保険料(○年分) |
💡ポイント:支払い期間の確認(前払費用の可能性)
自動車保険は、通常1年分を一括で支払うことが多いです。
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全額を「保険料(または車両費)」として費用処理できるか?
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支払った保険期間が当期(会計期間)だけにかかる場合は、全額を費用にできます。
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支払った保険期間が翌期(次年度)にまたがる場合(例:9月決算の会社が翌年3月までの保険料を支払った)、翌期にかかる部分については本来**「前払費用」として資産に計上し、翌期が始まった時点で改めて費用に振り替える期間按分**という処理が必要です。
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ただし、金額の重要性が乏しい小規模な会社では、支払った年に全額を費用(保険料)として処理する簡便法が認められるケースが多いです。
カード支払い明細書、銀行明細との突合せなどの作業の必要性
カード支払明細書や銀行明細との突合せ(照合)作業は、会計ソフトを利用しているかどうかにかかわらず、非常に重要で不可欠な経理業務です。
この作業は、正確な会計処理と内部統制(不正防止)を確保するための「命綱」とも言えます。
突合せ(照合)作業の重要性と目的
会計ソフトの導入により「仕訳入力」は楽になりますが、「突合せ」は人の手でチェックしなければならない重要な作業です。
1. 経理処理の正確性の確保
会計ソフトは、入力されたデータが正しい前提で動きます。
入力した仕訳と、実際に発生した外部データ(銀行やカードの明細)を照合することで、以下のミスを発見できます。
発見できるミス | 内容 | 影響 |
入力漏れ | 経費の支払いがあったのに、仕訳の入力を忘れていた。 | 費用が過少計上され、利益が過大になり、税金を払いすぎることになる。 |
二重入力 | 一つの取引を誤って二回仕訳してしまった。 | 費用が過大計上され、利益が過少になる(あるいは、売上などが二重計上される)。 |
金額の誤り | 15,000円の支払いを1,500円と入力してしまった。 | 帳簿の残高がすべて狂ってしまう。 |
勘定科目の誤り | 本来「消耗品費」であるべきものを「雑費」にしてしまった。 | 決算書が不正確になり、経営分析や融資審査の際に問題となる。 |
2. 現金・預金残高の確認(残高証明)
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銀行明細との照合(預金出納帳):
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会計ソフト内の「普通預金」勘定の残高と、銀行から発行された預金残高証明書(またはWeb明細)の残高が、月末などの特定日時点で完全に一致しているかを確認します。これにより、会社のお金が帳簿通りにあることを証明できます。
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クレジットカード明細との照合(未払金・役員借入金):
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社長カードや法人カードを利用した場合、カードの明細書と、会計ソフト内の「未払金」(法人カードの場合)や「役員借入金」(社長カードの場合)の残高を照合します。
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3. 内部統制(不正・横領の防止)
特に現金取引が絡む場合や、少人数で経理を兼任している場合、突合せ作業は横領や不正な支出を防ぐための重要な牽制機能になります。
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「現金実査」の強化: 現金出納帳の自動作成残高(帳簿残高)を、手元にある実際の現金(金庫など)と毎日、または定期的に突合せる「現金実査」は、現金の横領や紛失を防ぐための必須作業です。
クラウド会計ソフトでの突合せ作業
最近のクラウド会計ソフト(例:Freee、マネーフォワードなど)では、この突合せ作業の効率が大幅に向上しています。
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自動連携: 銀行口座やクレジットカードをソフトに連携すると、明細データが自動で取り込まれます。
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自動仕訳提案: 取り込まれた明細(例:「Amazonでの支払い 5,000円」)に対し、AIが過去の入力履歴を基に勘定科目(例:「消耗品費/役員借入金」)を自動で提案してくれます。
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突合せ(確認): 経理担当者が行うのは、AIの提案を確認し、「これで登録する」というボタンを押す作業です。
手動で仕訳をゼロから入力する場合でも、明細の件数と、ソフト内の仕訳件数が一致しているか、合計金額が一致しているかをチェックする作業は必ず行ってください。
結論として、突合せ作業は仕訳入力以上に大切であり、経理の正確性を担保するために欠かせない最終確認プロセスです。
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