1. はじめに:Amazonアソシエイトの支払書類の基本
Amazonアソシエイトのプログラムを利用している事業主様・経理担当者様向けに、Amazonからの収益に関する会計処理と、特に重要なインボイス制度への対応について解説します。
Amazonの管理画面からダウンロードできる「Recipient Created Tax Invoice」(購入者作成型インボイス、通称:RCTI)は、お客様の事業活動によって発生した収益と、それにかかる消費税が記載された正式な書類です。
📄 書類から読み取るべき重要情報
例・書類の中にはこのような部分があります。仕分けをしてみます。書類の日付は2025年2月18日とします。
📄 書類から読み取るべき重要情報
今回の事例(抜粋) |
経理上の意味 |
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---|---|---|
書類日付(確定日) |
2025/02/18 |
収益の確定日(発生主義で処理する場合の基準日) |
Description |
Earnings till the month December 2024 |
対象期間(2024年12月分) |
Net Amount (excl. Tax) |
5,955円 |
**売上高(税抜)**として計上する金額 |
消費税 |
596円 |
仮受消費税等として計上する金額 |
Total Amount (Incl. Tax) |
6,551円 |
普通預金として入金される合計額 |
2. 収益の会計処理(仕訳例)
ここでは、一般的な税抜経理方式と、簡易的な税込経理方式、およびより厳密な発生主義に基づく仕訳を解説します。
A. 推奨される仕訳:入金時一括計上(税抜経理方式)
ほとんどの課税事業者はこの方法を採用します。実際に銀行口座に合計金額が入金された日に仕訳を切ります。
日付 |
勘定科目 |
借方(左) |
勘定科目 |
貸方(右) |
摘要 |
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入金日 |
普通預金 |
6,551 |
売上高(または広告収入) |
5,955 |
Amazonアソシエイト 12月分収益 |
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仮受消費税等 |
596 |
10% 消費税 |
-
POINT: 消費税(596円)は「仮受消費税等」として分け、確定申告時の消費税納付額計算に使用します。
B. 簡易な仕訳:入金時一括計上(税込経理方式)
消費税の免税事業者など、税込経理方式を採用している場合は、すべてを税込金額で処理します。
日付 |
勘定科目 |
借方(左) |
勘定科目 |
貸方(右) |
摘要 |
---|---|---|---|---|---|
入金日 |
普通預金 |
6,551 |
売上高(または広告収入) |
6,551 |
Amazonアソシエイト 12月分(税込) |
💡【補足】「売掛金」と「未収金」の使い分け
発生主義で仕訳を行う際の債権科目(まだ入金されていないお金)として、マニュアルでは「未収金」を使っていますが、「売掛金」を使用することも全く問題ありません。
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売掛金: お客様の主たる営業活動(本業)によって生じた債権。
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未収金: 主たる営業活動以外から生じた債権(一時的・付随的な取引)。
もし、アフィリエイト収益が、貴社の主たる収益源(本業)である場合、より適切な勘定科目は「売掛金」となります。
社内の慣習や判断に合わせて、下記Cの仕訳にある「未収金」を「売掛金」に読み替えて処理してください。
C. 厳密な仕訳:発生主義に基づく処理(期間損益の正確化)
収益の確定月(12月)と入金月(2月)が異なるため、期間損益を正確に把握するために、収益確定時(12/31)に未収金(または売掛金)として計上し、入金時(2月)に回収処理を行う方法です。(税抜経理方式の場合)
(1) 収益確定時(例:2024年12月31日)
日付 |
勘定科目 |
借方(左) |
勘定科目 |
貸方(右) |
摘要 |
---|---|---|---|---|---|
12/31 |
未収金(または売掛金) |
6,551 |
売上高 |
5,955 |
Amazonアソシエイト 12月分収益確定 |
|
|
|
仮受消費税等 |
596 |
|
(2) 入金時(例:2025年2月18日以降)
日付 |
勘定科目 |
借方(左) |
勘定科目 |
貸方(右) |
摘要 |
---|---|---|---|---|---|
入金日 |
普通預金 |
6,551 |
未収金(または売掛金) |
6,551 |
Amazonアソシエイト 12月分入金回収 |
3. インボイス制度(適格請求書)に関する対応
Amazonが発行する「Recipient Created Tax Invoice」は、日本のインボイス制度に対応した適格請求書として機能します。
✅ 経理上の重要ポイント
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「購入者作成型インボイス」とは?
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通常、請求書は商品やサービスを提供する側(サプライヤー/弊社)が作成しますが、「購入者作成型インボイス(RCTI)」は、その名のとおり、購入者側(Amazon Japan G.K.)が代行して作成する適格請求書です。
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この方式を採用するには、事前に契約書や取り決め(Written Agreement)が必要であり、今回の書類にもその旨が記載されています。
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保存義務
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お客様(サプライヤー)は、Amazonが発行したこのRCTIを必ずデータまたは紙で保存してください。これが売上に関する消費税の計算根拠となります。
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消費税の取り扱い
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お客様が適格請求書発行事業者として登録している場合、この書類は有効なインボイスとなり、記載された消費税額(596円)に基づき、正確な売上高と仮受消費税の計上が行えます(上記A, Cの仕訳)。
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4. マニュアル運用上の注意点
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勘定科目の統一: 「売上高」と「広告収入」のどちらを使用するかは、社内の勘定科目体系に統一してください。
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日付の確認: 厳密な会計処理(発生主義)を行う場合は、収益の確定期間(例: 2024年12月分)と入金日を明確に区別して処理するようにしてください。
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書類の保管: 確定申告や税務調査に備え、この「Recipient Created Tax Invoice」のPDFまたは印刷物を最低7年間は保管してください。
💡 【補足】小規模な免税事業者の場合の処理アドバイス
年間売上が1,000万円以下などの理由で消費税の免税事業者である場合、会計処理は非常にシンプルになります。
免税事業者は消費税の申告・納付義務がないため、原則としてすべての取引を税込金額で処理する「税込経理方式」を採用するのが一般的です。
免税事業者が採るべき仕訳
上記「2. 収益の会計処理(仕訳例)」のBの方法が最も簡単で推奨されます。
日付 |
勘定科目 |
借方(左) |
勘定科目 |
貸方(右) |
摘要 |
---|---|---|---|---|---|
入金日 |
普通預金 |
6,551 |
売上高(または広告収入) |
6,551 |
Amazonアソシエイト 12月分(税込) |
免税事業者のインボイス対応のポイント
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インボイスの登録は不要: 免税事業者は、適格請求書発行事業者として登録する義務はありません。
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消費税は売上高に含める: RCTIに消費税額(596円)が記載されていても、免税事業者はこの596円を切り分けず、すべてを収益(売上高)として計上します。
このシンプルな方法を採用することで、日常の経理業務の負担を大幅に軽減できます。
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