小さな会社の自力決算、税務申告のマニュアルです。
弥生会計やfree、マネーフォワードといった大手の会計ソフトは自分で仕分けを入力しても決算まではできます。
しかし、税務申告ができません。
必要書類も複雑で会社の決算はできても税務申告をするために税理士事務所に頼んでいる人も多くいるでしょう。
しかし、弊社では、ネットビジネスで勘定科目がそんなにない会社なので自力決算税務申告を今年から試みました。
いままで依頼していた税理士事務所は、年間30万円ほど顧問料がかかっていたにもかかわらず、ミスばかりで、こちらの指摘で修正することがたびたびありました。
今年は、顧問契約を解除して自力決算です!
その過程の最終決戦を解説したします。
決算作業は、会社の1年間の成績を確定させる重要なプロセスです。その成績を国と地方自治体へ報告するのが「税務申告」です。
そして、納税です。
初めて自力で申告手続きを行う方にとって、税務署の窓口は少し敷居が高く感じるかもしれませんが、ご安心ください。
会計ソフトで作成した資料を基に必要な書類を整理し、提出時のポイントを押さえればスムーズに完了できます。
この最終チェックリストを参考に、自信を持って手続きを進めましょう。
税務申告までの書類を出すことのできる会計ソフトはあまりありません。
小さな会社で経理が比較的簡単なネットビジネス系やマイクロ法人系の自力会計向けのソフトは、「税理士いらず」「全力会計」でしょう。
ステップ 1:最終的に必要な申告書類一覧
お使いの会計ソフトで「法人税申告書一式」を出力した際に、必ず添付しなければならない書類(国税・法人税)の主なものは以下の通りです。
📄必須の申告書・決算書(計上根拠)
次の書類は、会社の経営成績と財政状態を示す「決算報告書」を構成し、申告書とセットで提出されます。
これらの書類は、税務署だけでなく、銀行からの融資や取引先との契約など、会社の信用力を証明する上で最も重要な資料となります。
| No. | 種類 | 書類名 | 概要 | 詳細な役割と重要性 | 
|---|---|---|---|---|
| 1 | 決算書 | 貸借対照表 (B/S) | 会社の財産状況を示す書類。資産、負債、純資産が記載されます。 | 「いつ時点の」会社の資産・負債の残高を表す、企業の健康診断書のようなものです。特に現金、預金、借入金など、資金繰りの状況を税務署が確認する際の基本情報となります。 | 
| 2 | 決算書 | 損益計算書 (P/L) | 会社の利益(儲け)を示す書類。収益と費用が記載されます。 | 「1年間で」どれだけ稼ぎ、どれだけ費用を使ったか、その結果どれだけの利益(あるいは損失)が出たかを示す成績表です。法人税の計算の基礎となる利益の額がここに示されます。 | 
| 3 | 決算書 | 株主資本等変動計算書 (SS) | 純資産の部が前期からどのように変動したかを示す書類です。 | B/Sの「純資産の部」の詳細な内訳で、赤字(当期純損失)によって繰越利益剰余金がどう減ったのか、あるいは増資など資本の動きがあったかを明確に示します。赤字決算であっても必ず提出が必要です。 | 
| 4 | 決算書 | 個別注記表 | 会社の会計処理方法など、詳細な注記を記載した書類です。 | 決算書の数字を補足する説明書きです。例えば、減価償却の方法(定額法か定率法か)や、重要な会計方針の選択などを記載し、決算書の信頼性を高めます。 | 
| 5 | 申告書 | 別表一(一) | 法人税の税額を計算し、申告する書類の本体です。 | 最終的に「いくらの法人税を納めます」と税務署に伝えるためのメインの書類です。各別表の計算結果を集約する「顔」となる様式です。 | 
| 6 | 申告書 | 法人事業概況説明書 | 会社の事業内容、役員構成、納税地などを記載する書類です。両面印刷が必要です。 | 会社のプロフィールを税務署に伝えるための書類です。事業の継続性や、前年との比較、取引状況などを把握するために使用されます。記載漏れがないか特に注意が必要です。 | 
🔍 添付が必須な内訳書・計算書
これらの書類は、決算書に記載されている数字がどのように計算されたのか、その裏付けを示すための詳細な明細です。
税務調査が入った際にも、まずこの書類からチェックされます。
| No. | 書類名 | 概要 | 詳細な役割と重要性 | 
|---|---|---|---|
| 7 | 勘定科目内訳明細書 | 売掛金、買掛金、固定資産など、主要な勘定科目の残高の詳細を記載します。 | B/SやP/Lの勘定科目の残高(例:売掛金100万円)が、具体的にどの取引先のもの(A社50万円、B社50万円)で構成されているかを示す一覧表です。税務署が最も細かくチェックする書類の一つです。 | 
| 8 | 各種別表 | 所得の計算や税額控除、引当金など、会社の状況に応じて必要な別表(別表四、五(一)など)の全て。 | P/Lの利益を基に、税法上のルール(損金不算入や益金不算入など)を適用して、法人税の計算の元となる「所得」を算出するための計算書です。(例:別表四:所得の計算、別表五(一):利益積立金の計算) | 
| 9 | 固定資産台帳(写し) | 減価償却計算の根拠となる台帳です。 | どの資産をいついくらで買い、どの償却方法(定率法/定額法)で、いくら償却したかを記録した台帳です。減価償却費の計算が正しいことの証明になります。 | 
💡 アドバイス:会計ソフトの出力機能を活用する
お使いの会計ソフトの「申告書作成」機能を使えば、上記全てがセットになった「申告書一式」がPDFで出力されるはずです。まずはそれを全て印刷しましょう。
さらに重要な裏付け資料: 上記以外に提出は不要ですが、いつでも提示できるよう準備しておくべき資料として、以下のものがあります。
これらは全ての取引の根拠となるため、申告後も大切に保管してください。
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総勘定元帳(元帳):全ての勘定科目の取引が時系列で記録されている帳簿です。 
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経費の証憑(領収書、請求書など):仕訳の根拠となる全ての書類(7年間の保管義務があります)。 
ステップ 2:申告書類を提出する際の注意事項とアドバイス
書類が全て揃ったら、スムーズに申告を完了させるための実務的な注意点です。
税務署(国税)での提出と、地方自治体(地方税)への提出が必要です。
1. 提出書類の準備と最終確認(実務編)
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提出用と控用(ひかえ)を2部作成する意味 申告書類一式は、必ず「税務署提出用」と、「税務署の受付印を押してもらう控え」の合計2部を印刷してください。控えは、将来の税務調査や金融機関への融資申請、そして地方税申告を行う際に、「国に提出したものと同じ書類である」ことを証明する公的な証拠となります。控えの重要性は非常に高いです。 
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書類の綴り方(ホチキス留め) 提出用と控用、それぞれ申告書(別表一)から始まり、各種別表、決算報告書(B/S、P/Lなど)、内訳明細書の順にまとめて、左上をホチキスで綴じるのが一般的です。法人事業概況説明書は別添とするか、最後に綴じます。 
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押印と署名の正しい位置 法人税申告書(別表一)本体への押印は不要になりましたが、添付する決算報告書(B/SやP/L)の表紙などには、代表取締役の署名(自筆)と代表者印(会社のハンコ)を押印するのが慣例です。監査役がいない会社は、その欄は空欄で構いません。 
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納税額の確認と納付書の準備 法人税の納付額が発生した場合、納付書(複写式の用紙)もあわせて作成し、銀行などで納税を行います。税務署に提出する申告書と、金融機関で納税する納付書は別物です。納付書には会社の整理番号が必要です。 
2. 地方税(市・県)の申告は忘れずに!
申告手続きは、法人税(国税)を扱う税務署での手続きが終われば完了ではありません。同じ期限内に、地方税(法人住民税と法人事業税)の申告も必要です。
| 提出先 | 申告する税金 | 提出方法の効率化 | 
|---|---|---|
| 税務署 | 法人税(国税) | まず税務署に行き、控えに受付印をもらう。 | 
| 県税事務所 | 法人事業税・県民税 | 県用の申告書に、税務署の受付印が押された控えのコピーを添付して提出。 | 
| 市町村役場 | 法人住民税 | 市町村用の申告書に、税務署の受付印が押された控えのコピーを添付して提出。 | 
💡 効率的な申告手順:
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税務署へ提出し、受付印が押された控えを受け取る。 
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その控えのコピーを作成する。 
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そのコピーを添付して、県税事務所と市町村役場に申告する。 
3. 申告提出時の最終チェック項目
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日付の確認: 決算書の日付欄は、株主総会(または承認日)の日付が入っているか確認しましょう。 
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期限厳守: 法人税の申告期限は、決算日から原則2ヶ月以内です。期限が土日祝日の場合は翌営業日になりますが、遅延がないよう11月に入ったら早めに手続きを完了させましょう。 
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受付印の確保: 税務署の受付窓口で、必ず控えの表紙(別表一)に「受付印」を押してもらいましょう。これが申告完了の唯一の証拠です。 
最終調整、本当にお疲れ様でした!
このマニュアルを参考に、自信をもって申告に臨んでください。

 
  
  
  
  
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