「面倒だな」「後回しでいいや」
誰でも一度は経験する、この「先延ばし」の誘惑。仕事や家事、勉強など、やるべきことがあるとわかっていても、なかなか行動に移せない。
そんな経験はありませんか?
ついついスマホを触ってしまったり、ダラダラとテレビを見てしまったり…。
「自分は意志が弱いんだ…」と落ち込んでしまうこともあるかもしれません。
でも、ちょっと待って!
もしかしたら、それはあなたの性格ややる気のせいではなく、 脳の働き方が原因かもしれません。
今回紹介する 「すぐやる! 「行動力」を高める″科学的″な方法」 は、脳科学の観点から「行動力」の謎に迫り、誰でも簡単に「すぐやる人」になれる方法を教えてくれる一冊です。
脳は、損傷を受けていない私たちにとっても、パフォーマンスを向上させるための大きな可能性を秘めていると著者の菅原洋平さんは述べています。
菅原さんは、リハビリテーションの専門家として、人間の脳と体の関係について長年研究を重ねてきました。
その経験から、脳の仕組みを理解し、適切なアプローチをすることで、誰でも「すぐやる人」に変身できると提唱しています。
本書では、「すぐやる人」と「すぐやらない人」の違いは、脳への「情報入力」の仕方に隠されている ことを具体的な例を挙げながら解説し、日常生活の中で誰でも簡単に実践できる、脳を「すぐやるモード」に切り替えるテクニック を紹介しています。
脳科学に基づいた「行動力」アップ術!
本書の著者は、作業療法士として人間の行動と脳の関係を研究している菅原洋平さんです。
長年の臨床経験と脳科学の知識に基づき、「すぐやらない」のは性格ではなく、脳が「すぐやるモード」になっていないだけだと断言します。
本書では、「すぐやる人」と「すぐやらない人」の行動の違いは、脳への「情報入力」の違いであると説明されています。
例えば、食事をなかなか始められなかった患者さんに、定食スタイルではなく、一品ずつ料理を提供するようにしたところ、すぐに自分で食事をするようになった例が紹介されています。
これは、一度にたくさんの料理が並んでいると、脳にたくさんの情報が入ってしまうため、脳が処理しきれずに「行動する」という指示をうまく出せなくなることが原因だと考えられています。
このように、脳は、視覚から入る情報に大きく影響を受けます。
つまり、視覚情報のコントロールこそが、脳を「すぐやるモード」にするために重要なのです。
例えば、テレビのリモコンが目に入る場所に置いてあると、脳は自動的に「テレビを見る」という行動を選択してしまいます。
これは、「モデルフリーシステム」と呼ばれる、脳の無意識の行動パターンによるものです。
本書では、このような脳の仕組みを理解した上で、日常生活の中で誰でも簡単に実践できる、脳を「すぐやるモード」に切り替えるテクニックが多数紹介されています。
例えば、「テレビのリモコンの定位置を決める」「To Doリストを付箋に書き出すのをやめる」「爪の手入れをする」など、今日からでも始められるものばかりです。
これらのテクニックは、脳科学に基づいたものではありますが、決して難しいものではありません。
むしろ、「そんなことで変わるの?」と思うくらい簡単なものばかりです。
しかし、著者は、これらの小さな習慣を続けることで、脳の働きが変わり、行動に大きな変化が現れると断言しています。
今すぐできる!脳を「すぐやるモード」にするテクニック
本書には、すぐに試してみたくなるテクニックがたくさん紹介されていますが、その中でも特に効果を実感しやすいものをいくつかご紹介します。
3-1. 視覚情報のコントロール
まず最初にご紹介するのは「視覚情報のコントロール」です。
人間の脳は、視覚情報にとても強い影響を受けます。テレビやスマホ、パソコンなどが視界に入ると、脳はそれらに注意を奪われ、「すぐやるモード」から簡単にシャットアウトされてしまうのです。
例えば、「テレビのリモコンが目につく場所に置いてある」「仕事中にスマホを近くに置いている」といった環境では、ついついテレビを見てしまったり、スマホを触ってしまったりするのは当然のこと。
「すぐやる」ためには、視覚情報が脳に入ってくるのを最小限に抑えることが重要なのです。
具体的な方法としては、
- テレビのリモコンを収納する
- スマホを別の部屋に置く
- 作業スペースから不要なものを取り除く
といったことが挙げられます。
なぜなら、脳は目から入った情報に最も大きな影響を受け、視覚を通して「相手がどのような人か」「どんな状況か」を判断しているからです。
例えば、初対面の人と会ったときには、見た目でその人を判断します。
これは「メーラビアンの法則」と呼ばれ、人は視覚情報に強く影響されることが分かっています。
そして、脳は見たものをなかなか覆すことができません。
テレビのリモコンが目に入ると、脳は自動的に「テレビを見る」という行動を選択してしまいます。
これは、「モデルフリーシステム」と呼ばれる、脳の無意識の行動パターンによるものです。
つまり、テレビのリモコンを目につく場所に置いていると、脳に「見ろ」という環境をつくっていることになり、結果的に「すぐやらない」方向に脳を仕向けていることになるのです。
「見てはいけない」と意識すればするほど、脳はさらに「すぐやらない」ようになってしまいます。
そして「やってはいけないことをやってしまった」という罪悪感が、「すぐやる」ことを阻害するのです。
罪悪感を抱くと、脳は「報酬系」を活性化させ、「その罪悪感を帳消しにする行動」を「価値のあるもの」と評価してしまいます。
例えば、「テレビを見てはいけない」と思いつつも、目につく場所にあるために見てしまい、後で罪悪感を抱きます。
すると脳は、その罪悪感を帳消しにするために、さらにテレビを見ることを正当化してしまうのです。
このように、「見てはいけない」と意識するのではなく、「そもそも見ない」ように視覚情報をコントロールすることが重要なのです。
そしてそのための有効な方法が、「見たくないものは視界に入れない」ことです。
テレビのリモコンを置く場所を決めるなど、意識的に視界に入るものをコントロールすることで、脳の無意識の行動パターンに介入し、「すぐやるモード」に切り替えることができるのです。
行動に区切りをつける
次にご紹介するのは「行動に区切りをつける」というテクニックです。
人間の脳は、行動に区切りをつけることで、次の行動を予測しやすくなるという性質があります。
例えば、「会議が終わったらすぐに資料をファイリングする」「食事を終えたら食器を一枚だけでも洗う」といったように、小さな行動にも区切りをつけることで、脳は「次は何をすべきか」をスムーズに理解し、行動に移しやすくなります。
反対に、行動に区切りをつけずにダラダラと続けていると、脳は混乱し、「すぐやるモード」から抜け出せなくなってしまいます。
これは、脳が体を動かす際、「フィードバック」と「フィードフォワード」という二つのシステムを使っているためです。
フィードバックは、過去の行動や結果に基づいて、体の動きを修正していくシステムです。
会議資料をデスクに置くという行動を例に挙げると、資料を置いたときの景色や音、重みなどの情報が脳にフィードバックされ、脳はそれを基に「次はもう少し上手に置こう」というように、行動を修正していきます。
一方、「フィードフォワード」は、未来の行動を予測し、そのために必要な体の動きを事前に準備するシステムです。
例えば、「書類を綺麗に保管するために、丁寧にファイリングする」という目的がある場合、脳はあらかじめ、書類の順番や向きなどを予測し、丁寧にファイリングするための体の動きを準備します。
行動に区切りをつけずにダラダラ続けていると、脳はフィードバックシステムばかりを使うようになり、目の前の作業に集中してしまい、次の行動を予測することが難しくなります。
会議資料の例で言えば、「デスクをきれいにしよう」という漠然とした目的だけでは、脳はフィードフォワードシステムを働かせることができません。
なぜなら、「会議資料」と「デスクのきれいさ」の関連性が、脳内で明確に結びついていないからです。
そこで、「会議が終わったら、資料をすべてファイルにしまう」というように、行動に区切りをつけることで、脳は「会議資料をしまう」という行動と、「デスクをきれいにする」という目的を関連付けることができます。
そして、その目的を達成するために、フィードフォワードシステムを働かせ、次の行動を予測しやすくなるのです。
このように、行動に区切りをつけることは、脳に「小さな達成感」を与え、「すぐやるモード」を維持するために非常に効果的です。
資料をファイルにしまう、議事録のテンプレートを作成するなど、小さな行動でも良いので、まずは「区切り」を意識して行動してみましょう。
それが、脳を「すぐやるモード」に導く第一歩になります。
「触る」ことを意識する
3つ目にご紹介するのは、「触る」ことを意識する、というテクニックです。
視覚や聴覚の情報よりも、触覚から得られる情報の方が、脳に与える影響が大きいことは、あまり知られていません。
例えば、顔を丁寧に洗ったり、植物を触ったり、お気に入りの文房具を使ったりする際に、意識的に「触覚」に集中することで、脳を活性化させることができます。
なぜなら、触覚は五感の中で唯一「ブロックできない」感覚だからです。
視覚や聴覚、嗅覚は、目を閉じたり、耳をふさいだり、鼻をつまんだりすることで、情報の入力を遮断することができます。
しかし、触覚は、常に外界と接している皮膚を通して情報が入ってくるため、ブロックすることができません。
また、触覚は、脳が最も信頼する感覚でもあります。
視覚や聴覚の情報は、過去の経験や知識に基づいて脳内で解釈されるため、時には誤解が生じることもあります。
しかし、触覚の情報は、直接体で感じるため、脳はそれを無条件に信じる傾向があります。
このため、意識的に触覚を刺激することで、脳にダイレクトに働きかけ、活性化させることができるのです。
具体的な方法としては、次のようなものがあります。
- 顔を丁寧に洗う 洗顔料をしっかりと泡立て、肌の質感を感じながら丁寧に洗いましょう。
- 植物を触る 葉っぱの形状、茎の感触、花の香りなど、五感を研ぎ澄ませて感じてみましょう。
- お気に入りの文房具を使う ペン先の反発力、紙の質感、インクの滑らかさなどを感じながら、丁寧に字を書いてみましょう。
このように、日常生活の中で意識的に「触る」ことを取り入れることで、脳を活性化し、「すぐやるモード」に切り替えることができるのです。
日常生活をルーチン化する
最後は、日常生活をルーチン化する、というテクニックです。
人間の脳は、新しいことを覚えたり、複雑なことを考えたりするときに多くのエネルギーを消費します。
反対に、毎日同じ行動パターンを繰り返すことで、脳のエネルギー消費を抑え、「すぐやる」ためのエネルギーを温存することができます。
私たちは、ふだん、朝起きてから夜眠るまで、無数の動作を「脳の指示」によって行っています。
新しい動きをするたびに、脳は筋肉に新しい指示を出し、そのフィードバックを受け取って、微調整を繰り返しています。
しかし、もし、脳がすべての動作に対して、いちいち指示を出していたら、あっという間にエネルギーがなくなってしまいます。
そこで、脳は、省エネのために、一度行った動作を記憶し、同じ動作を繰り返すときは、記憶を再生するだけにしています。
これが「クセ」や「習慣」です。
日常生活をルーチン化することは、脳のこの省エネ機能を最大限に活用することです。
毎日同じ時間に起床し、同じ時間に食事をし、同じ時間に就寝する。
通勤経路や服装、持ち物なども、できる限り同じにすることで、脳のエネルギー消費を抑え、「本当に重要なこと」にエネルギーを使うことができるようになります。
例えば、新しい鞄に変えただけで、歩くときに持つ手の角度が変わったり、いつもとは違う筋肉を使うことになります。
あるいは、いつもと違う道を通るだけで、脳は、周囲の状況を判断しながら歩くことになり、余分なエネルギーを消費してしまいます。
「今日はいつもと違うことをしよう」と、些細な変化を加えただけでも、脳にとっては、新しい課題が増えることになります。
もちろん、「いつも同じ」であることが、必ずしも良いわけではありません。
新しいことにチャレンジすることで、脳が活性化され、より多くのことを学習できるようになるというメリットもあります。
しかし、現代社会では、多くの情報が溢れ、常に新しい選択を迫られる状況にあります。
そのため、脳は慢性的に疲労し、「本当にやるべきこと」に集中できなくなっている人が多いのです。
本当に「すぐやる」人になるためには、「何にエネルギーを使うべきか」「どこを省エネできるのか」を意識することが大切です。
具体的な方法としては、次のようなものがあります。
- 毎日同じ時間に起床・就寝する
- 食事の時間や内容をできる限り固定する
- 通勤経路や服装、持ち物を決めておく
- 仕事の順番や休憩時間など、1日のスケジュールをパターン化する
このように、日常生活の中で「いつも通り」を増やすことで、脳のエネルギーを節約し、「すぐやる」ためのパワーを充電しておきましょう。
まとめ: あなたも今日から「すぐやる人」に!
「すぐやる! 「行動力」を高める″科学的″な方法」では、本書で紹介されているテクニックを実践することで、誰でも「すぐやる人」に変われる可能性を秘めていることを教えてくれます。
ぜひ本書を手に取って、その効果を実感してみてください。
これまで、「すぐやらない人」は、「性格」「やる気」の問題と捉えられがちでした。
しかし、本書ではそれは間違いであり、脳のモードが「すぐやるモード」になっていないだけだと解説されています。
脳の仕組みを理解し、適切な方法で脳に働きかけることで、誰でも「すぐやる人」に変身できるのです。
そのために必要なのは、「問題が起こってから対処する」のではなく、「問題が起こらないようにする」という、睡眠管理にも通じる発想です。
本書では、脳科学に基づいた具体的なテクニック、例えば「行動に区切りをつける」「触覚を意識する」「日常生活をルーチン化する」などが紹介されています。
これらのテクニックは、脳の働きを助けることで、「すぐやる」ための行動を促します。
そして、行動が変わることで、あなたは自分自身の人生における限られた時間を、より充実させることができるでしょう。
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